おく農園日記 アーカイブ

私のパパイヤ栽培 ③

2022年8月26日

えっ! 南伊豆で静大の公開講座が・・・青パパイヤの何がすごいのか?
南伊豆町始まって以来の出来事だろう。主催した静大農学部准教授の松本和浩先生はパパイヤを作っている所、南伊豆や松崎町で講座を開いていつもの学生ではなく、地域の人たちにもパパイヤの学習を通して地域おこしについても意識を高めてもらいたかったのではないか思う。
2020年9月25日、南伊豆町道の駅「湯の花」で静岡大学農学部の公開講座が開かれた。園芸イノベーション学研究室の松本和浩准教授と大学院修士2年の影山史弥さんが青パパイヤのことを講演してくださった。影山さんが伊豆は温暖で降水量も多く、パパイヤ栽培の適地であるのでパパイヤ栽培を薦めた。彼の研究テーマであったパパイヤ栽培法など大変わかりやすくお話してくれた。

静大公開講座で講演する影山史弥さん

2020年9月伊豆新聞

パパイヤ栽培者(河浦輝雄さん、吉田)も経験談・・・非常に魅力的な作物だ!!
講座の中で私と松崎町でパパイヤ栽培している河浦輝雄さんが4年間の栽培体験を話した。河浦さんはパパイヤ狩りも行い、マスコミに報道されたので多くの人がパパイヤ狩りに訪れている。その中で日本に住んでいるフィリピン人やアジアの人たちがまとめ買いしていくという話をされた。
「ここのパパイヤは美味しい。毎日食べている。もったいなくて旦那(日本人)にはたべさせない」
アジアの人たちは青パパイヤを常食しており、その栄養価も体が知っているらしい。河浦さんの栽培は4月に小さな苗が入った後、5月に植付けて7月に開花し始め、9月下旬には青パパイヤとして収穫が始まっている。そして霜が降りる11月下旬には高さが4mにもなって30~40個の青パパイヤを収穫する。松崎の河浦さんを訪れると「パパイヤのジャングル」を体感できる。パパイヤの勢いの強さは他の作物では見られず、別格の強樹勢であることが理解できる。

2020年9月伊豆新聞

松本准教授の話・・・さすが、先生の話は奥が深い・・パパイヤを通してできる事がいっぱいある
青パパイやに含まれる酵素や調理法などを紹介していただいた。生産者は単なる収穫されたものを販売するだけではなく、自分の作る作物をどのように大切に作っているか、またどんなこだわりを持って作っていかを消費者に伝えていく必要があると話された。都会においては〇〇のパパイヤ▲▲のパパイヤ☓☓のパパイヤと個性がありすぎてはスペースもないので個性は取り払われ、単なる「青パパイヤ」と表示される。田舎では逆に個性を主張して販売することが可能なので実施することが必要と。
青パパイヤの酵素はパパインというたんぱく質分解酵素がある。しかし完熟したパパイヤには入っていない。青パパイヤは(未熟)果皮を傷付けると乳液が出てきて、昆虫から実を守るために備わっている。害虫にとって、タンパク質分解酵素はタンパク質が溶けてしまうのでものすごい毒となる。農業的な考え方をすれば、無農薬でも栽培できるということになり、実際農薬は不要で栽培できる。青パパイヤは肉料理と一緒に取ることで消化を助ける、相性の良い食材である。ほかにも栄養的な面では豊富な食物繊維などが人の健康面で良い影響を与えているらしい。酵素のことを基礎的なことから話してくださったのでとてもよく理解ができた。アジアでは昔から食べられており、ゆっくりと体質改善することは実証されている。
パパイヤの葉も乾燥してお茶にすると茶色っぽくなり、ポリフェノールが入っており、抗酸化作用がある。青パパイヤは栽培するにも強健で食べても本当に健康的な作物である。青パパイヤを生産する人はこだわりを伝えていく必要がある。一人では限界があっても一つの活動に対して多様な意味を持たせて、いろいろな人とかかわりながら活動していくことを勧めてくれた。地方では満足な条件がなかなかそろわないが、創造力を使って今できる事をしていくことの必要性を話された。そのような活動を進めていく中で人は互いに影響し合って変わっていくことができ、それは素晴らしい事であると強調され、中身の濃い、奥の深い話に大変共感したわくわくした公開講座でした。

来年は松崎町で静大公開講座が予定されているようですから、それまでに青パパイヤを通じた活動が一段と進むようにしたいもの。

青パパイヤは民間薬として実績がある

静大と県内各地の農家や関係者と協力して

海も山のものも豊かな南伊豆、そして住む人の心豊かであったなら・・・人は集まる!来てくれる!!
そんなことを信じつつ、南伊豆の産物がいっぱい集まる直売所「湯の花」目指して頑張っていきたい。パパイヤがしっかり南伊豆に根付いて、みんなが喜び合えたらこんな素晴らしことはないと思う。

湯の花加工部がパパイヤ茶を製品化した

私のパパイヤ栽培 ②

2022年8月26日

収穫・・・花が7月に咲いてから7ケ月長~い
2月になると地面に接するほどの所に着果している大きなパパイヤ2,3個の色が緑色からやや薄くなり、やがてほんのり先端部分が色づいてきた。しかし収穫を期待するもここからが長い。やがて半月も過ぎようかという3月に入って半分ほど色づく。11月から3月までの間は果実の充実期間である。いよいよ収穫。収穫しても食べるには果実の緑の部分がオレンジ色になってしまうまで待たねばならない。全体に色が回ってきた時、初めての試食。実がしっかりとして色は濃いオレンジ色。エキスがきらきら光り見た目素晴らしく、香りも良く待ちに待ったおいしさである。糖度だけがもう少しあればという状態だった。これはパパイヤの温度が15℃以上ないと本来の甘さが出てこないためだ。5月になると自然と温度が高くなるので糖度もぐっと上がって食味は一層向上してきた

販売・・・なかなか売れない。でも・・
値段が高すぎるのかもしれない。売れないとこの思いが頭を悩ませる。しかし色々考えるとこれくらいで売れなくてはと迷う。要するに珍しいものだからどんな味かもわからず、すんなり購入する人はいないということだ。
「青パパイヤで売ってみたら」と声がかかる。味も素っ気もない青パパイヤではと思いつつ何とか売れたらと出荷してみた。青パパイヤで収穫すると白いエキスが噴き出してきて大変。収穫して手に白いエキスがついたまま目でもこすろうものなら目が痛くなって開けていられない。タンパク質分解酵素が豊富なので扱いも果皮を傷つけないように丁寧に袋に入れる。

で、青パパイヤは売れたのか? ・・・お客様レシピで売れ始める
最初は大変には売れないが少しずつ売れていった。同時に完熟パパイヤも後を追いかけるように売れ出した。青パパイヤは自分も食べたことはないが、でも買ってくださる人が少しだがいる。何とかしたい。要は食べ方がまずわからないと買ってくれない。買ってくださる人に食べ方レシピを書いてもらい、教えてもらおう。アンケート用紙と募集箱を置いた。書いてくれた人には青パパイヤをプレゼント。効果があった。

青パパイア料理法募集用紙と結果

色づき始めたパパイヤ青

青パパイヤサラダ「ソムタム」

ソムタム(青パパイヤのサラダ) ・・・しゃきしゃき歯ごたえのあるサラダ
一番知られているパパイヤ料理は青パパイアのサラダ「ソムタム」である。東京から来て南伊豆の宿泊施設で働いているKさんがタイ料理の店を任されていたというほど詳しい。そんな出会いから我が家でソムタムを実演調理してもらった。

ソムタムの作り方

青パパイアの皮をむく
ピーラーで細く削り、ソーメン状にする
すり鉢に入れ、すりこ木で軽くたたくようにして固い繊維を柔らかくする
ソムタムのエキス(市販品)を少しずつ加える・・
自分の味覚に合った辛さでストップ(ここがポイント)
ミニトマトやインゲンなど彩りを加えて出来上がり

簡単にできてとてもおいしい。湯の花喫茶の宮北さんはこのソムタムのエキスまで自分で作ってしまう。青パパイヤは味に癖がなく、いろいろなものに使えて、カレーやかき揚げなども人気があるので少しずつ広まっていくのではないかと思っている。

2年目のパパイヤ・・・下から出る脇芽を伸ばす
3月頃から収穫が始まったパパイヤも夏ころにはほとんど終了する。下のほうから小さな脇芽が出ているので太い主幹を脇芽の上で伐る。主幹を切るとすぐに脇芽は伸びだし、同時に花も咲いている。ぐんぐん伸びて秋には青パパイアで販売できるほどの大きさになる。露地では霜が降りると株が凍ってダメになってしまい、1年限りのものだが、ハウスでは成長、収穫が継続できるのである。大きな葉や次々となる実を維持するには地面全体がたっぷりと染み渡るほどの灌水をしないと思うようには育たない。充分な水肥料を与えることがポイントとなる。こうやって繰り返し4年目の栽培をしている株もある。

夜温5℃でチャレンジ・・・失敗だったなー
パパイヤは0℃になると凍って溶けてしまうが、ハウス内10℃で(適温は15℃)で生育している。生育を続けなくても良いから越冬できないものかと凍らない限界温度の5℃設定で栽培してみた。結果は実がいっぱいなったパパイヤは次々に枯れてしまった。1年間の労力は全く無駄になり、泣く泣く片づける羽目になった。
懲りずに翌年2回目のチャレンジをした。温度は5℃だが、換気扇(ボナルド)を回しっぱなしにしてハウス内の気流を停滞させないようにした。冬も終わりの3月まで持ちこたえた。しかし3月になるとパパイヤの葉色が薄くなり、やがて黄色くなり、株元から腐り始めた。2年続けて失敗してしまった。地温の確保がもっと大事だったのだ。失敗を繰り返しながら、パパイヤの技術は定着していくのだと気持ちを切り換えている。

将来に向けて・・・とにかく強いパワーあふれるパパイヤだ
栽培していてとにかく強い作物だ。ぐんぐん伸びて気持ちが良い。私はハウス栽培だが、松崎町の河浦花園の露地のパパイヤは4mにも育つ。このエネルギーを私たち人間もいただいて健康に生きていけるような気がする。暖かい南伊豆にはとても合う植物と思う。

4年目のパパイヤ人間の胴ほどの太さに育つ

私のパパイヤ栽培 ①

2022年8月26日

パパイヤ導入・・・これはいけそうだ!!
2015年、農業新聞で石垣珊瑚という品種が沖縄県で栽培され、産地化に向けて取り組んでいるという記事を見つけたのが私のパパイヤ栽培の始まりであった。
石垣珊瑚というパパイヤは単為結果性(雌木だけで着果する)で低位置から着果し、沖縄県の国際農林水産業研究センターで2008年に開発、品種登録されたものである。
実は種なしで甘いパパイヤとして主に沖縄県石垣島で栽培されており、果形は長楕円形で果肉はオレンジ色、糖度平均が13.8度で香りも高い。平均重が840g(以上国際農林水産業研究センター)
この記事を見て、「これは良い」と決断した。苗木を購入したくて、早速ネットで検索して沖縄県の種苗会社に問い合わせるも在庫なし状態が続いて、注文することができない。翌年3月になり、苗木販売を開始したということがHPに出たので早速注文した。4月になり、はるばる沖縄から苗木が届いた。

苗木育成・・・生長点培養された繊細な苗を大事に育てる
9㎝ポットに入った高さ10㎝足らずのひ弱な小さな苗を大事に取り出し15㎝ポットに植え替えた。ちょうど夏野菜苗を生産中だったのでその温床の片隅に入れて育てた。温度は20℃近くあり充分である。灌水過多は根っこが腐ってしまうので乾いたら灌水する程度に管理した。
生育は早く、あっという間に野菜たちを追い抜く背丈になった。5月、がっちりと25㎝ほどにたくましくなった苗をハウス内の予定の場所に定植した。


小さな苗を5寸ポットに。6月20日勢いよく伸びている(定植30日)

7月下旬に咲き始めた花が次々上に咲いていく(8月)

本圃・・・しっかり堆肥や良質の肥料を深く、深く入れて準備OK
苗木のパパイヤがぐんぐん大きくなるのを見て、植え付け場所の準備にかかった。堆肥、自家製のボカシ肥料、カニガラ、苦土石灰など土に撒き、耕運して床を作り、充分灌水した。1年目はこの状態で1,8m間隔に植えた。(2.5m×2.5mが標準)2年目の時は定植場所に直径50㎝深さ50㎝ほどの穴を掘り、その中に堆肥やカニガラボカシ肥料など入れ、掘り起こした土とよく混ぜて準備して、そこに丁寧に植えた。今では穴を掘って植え付ける方法をとっている。床が出来たら灌水を十分行い、10日間くらいなじませてから定植した。露地の場合はまだパパイヤにとっては寒いので6月くらいまではトンネルを掛けることになるがハウス内ではそのままで良い。

定植後・・・抜群の樹勢で伸びていく
定植後の生育はとても速い。毎日ぐんぐん伸びている。2か月後には背丈は1m位だが大きな葉が上に横にと縦横に張り出して伸びているので上に伸びた葉まで含めると1.5mを超え隣の株と交差するほどになる。7月下旬には地面から30~40㎝の低い所から開花をはじめる。着果する長さが長くなり農家にとってはうれしい。成長期には水と肥料をたっぷり与える。
以後3,4日ごとに1節ずつ葉のわきから次々開花して上がってくる。当然、最初に咲いた下の実はどんどん膨らんでくる。2か月後の9月には500g位になり、青パパイヤとして収穫できてしまう。その頃には背丈は2mを超え、葉は大きく広がり、3mにもなる。葉の長さだけでも1.5mはあり、大きくたくましく見ごたえがある。人の腕ほどの太さの茎に青々とした実が次々になっている。露地で作る場合はそのままに伸ばし続け、収穫も11 月頃まで行われる。

完熟まで・・・まだまだ長~い時間開花して7ケ月もかかる
10月いっぱいはハウスも昼夜開けっ放しでも良いが、外気温が下がってくるので11月にはいる頃までには保温、加温の準備をする。ハウス内は内側に2枚のビニールカーテンをセットする。かなりの手間であるが大切な仕事である。サイドは締切であるが天井部分は毎日開閉するようになっている。この時パパイヤは一番上の天井ビニルまで葉が届いており、4m以上になる。カーテンの開閉の高さまで切り下げなければならない。バサバサと大きな葉っぱを切り落としてしまう。秋には生長点を止めてあるのだが、何せ勢いのあるパパイヤなので止めた一番上から脇芽を新たに伸ばしているので、そこのところも切り落としが必要となる。上の葉っぱを落としてしまうと今までジャングル状態だったハウス内もずいぶん明るくなる。パパイヤはトマトのハウスに居候状態なので夜間温度は10℃を保たれている。大きな実をいっぱいつけた状態であまり変わらないまま、11 月12月、1月、2月と辛抱強く春を待つ。早く色づかないかなーと毎日眺める日が続く。(⇒2)

9月16日

10月27日

イラスト斉藤泉